大切な方を亡くされた時、残されたご家族が受け取れる公的年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」という二種類があります。この二つの年金は、受け取れる条件や金額などが異なります。ここでは、「遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い」について、皆さんが理解しやすいように、それぞれの特徴や違いを詳しく解説していきます。

遺族基礎年金と遺族厚生年金、どこが違うの?

「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の最も大きな違いは、加入している年金制度によって受け取れるかどうかが決まる点です。簡単に言うと、国民年金に加入していた方が亡くなった場合は「遺族基礎年金」、厚生年金に加入していた方が亡くなった場合は「遺族厚生年金」が、それぞれ基本となります。 これらの違いを理解しておくことは、万が一の際に適切な支援を受けるために非常に重要です。

具体的に見ていきましょう。遺族基礎年金は、亡くなった方が国民年金の第1号被保険者、第3号被保険者、または厚生年金保険の被保険者であった場合に、その遺族が受け取れる年金です。一方、遺族厚生年金は、亡くなった方が厚生年金保険の被保険者であった場合に、その遺族が受け取れる年金です。つまり、遺族厚生年金は、遺族基礎年金よりも手厚い保障と言える側面があります。

さらに、受け取れる遺族の範囲や、支給される条件にも違いがあります。遺族基礎年金は、主に「子どものいる配偶者」や「子ども」が対象となります。一方、遺族厚生年金は、配偶者、子、孫、父母、祖父母など、より広い範囲の遺族が対象となる可能性があります。ただし、それぞれに「死亡した当時、生計を同じくしていた」などの要件があります。

まとめると、以下のようになります。

  • 遺族基礎年金: 国民年金がベース。子がいる配偶者や子供が主な対象。
  • 遺族厚生年金: 厚生年金がベース。より幅広い遺族が対象となる可能性があり、金額も高くなる傾向がある。

遺族基礎年金についてもっと詳しく!

遺族基礎年金は、亡くなった方が国民年金に加入していた場合に、その遺族に対して支給される年金です。これは、国民年金制度の基本的な保障の一部と言えます。受け取れるのは、主に「18歳未満の子ども(障がいのある場合は20歳未満)がいる配偶者」、または「その子ども」です。お子さんがいない場合や、お子さんが成人している場合は、原則として受け取ることができません。

遺族基礎年金の金額は、亡くなった方の保険料納付状況によって決まるのではなく、原則として一定額が支給されます。これは、国民年金が「皆で支え合う」という考え方に基づいているためです。金額は、お子さんの人数によって加算される仕組みになっています。

  1. まず、一定の基礎額が支給されます。
  2. お子さんがいる場合は、お子さんの人数に応じて加算されます。
  3. さらに、障がいのあるお子さんの場合は、年齢に関わらず加算の対象となることがあります。

遺族基礎年金を受け取るためには、亡くなった方が一定期間以上の国民年金保険料を納めている必要があります。具体的には、「死亡した月の前々月までに、国民年金被保険者期間の3分の2以上の期間、保険料が納付または免除されていること」といった条件があります。また、学生で免除を受けていた期間なども考慮されます。

受給権者(受け取る権利のある人)は、配偶者または子どもですが、優先順位があります。例えば、子がいる配偶者が優先され、配偶者がいない場合は子どもが受け取ります。子どももいない場合は、支給されません。この点も、遺族厚生年金との違いとして覚えておくと良いでしょう。

遺族厚生年金はどんな人がもらえるの?

遺族厚生年金は、亡くなった方が厚生年金に加入していた場合に、その遺族に支給される年金です。遺族基礎年金とは異なり、遺族厚生年金は、亡くなった方の給与や保険料の納付額に基づいて計算されるため、金額に幅があります。また、遺族基礎年金に比べて、より広い範囲の遺族が受給権者となる可能性があります。

遺族厚生年金を受け取れる遺族の範囲は、以下の通りです。

優先順位 受給権者 条件
1 遺族基礎年金の対象となる子がいる場合は、遺族基礎年金と合わせて受給。子がおらず、55歳以上の場合は、自身が65歳になるまで遺族厚生年金のみ受給(ただし、本来の受給権者である配偶者などがいない場合)。
2 子・孫 18歳未満の子(または20歳未満で障がいのある子)。
3 父母・祖父母 55歳以上であること。

上記以外にも、60歳以上の「夫」や「祖父母」などが、一定の条件を満たせば遺族厚生年金を受け取れる場合があります。

遺族厚生年金の金額は、亡くなった方の「厚生年金加入期間中の報酬比例部分」と「定額部分」を基に計算されます。具体的には、平均標準報酬額(給与の平均)に、加入期間に応じた計算率をかけて算出されます。そのため、給与が高かった方や、長く厚生年金に加入していた方の遺族は、より多くの遺族厚生年金を受け取れることになります。

遺族厚生年金を受け取るための条件としては、亡くなった方が「厚生年金保険の被保険者であった期間の3分の2以上」で、かつ「死亡月前々月までに被保険者期間(厚生年金加入期間)の3分の2以上」の期間、保険料が納付または免除されていることが必要です。また、厚生年金保険の被保険者であった期間が20年以上ある方が亡くなった場合、遺族(妻など)が65歳未満でも、遺族厚生年金を受け取れる場合があります(ただし、65歳になるまでは遺族基礎年金がない場合)。

遺族基礎年金と遺族厚生年金の同時受給について

「遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い」を理解した上で、多くの方が疑問に思うのが、この二つの年金を同時に受け取ることができるのか、という点です。結論から言うと、 条件を満たせば、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取ることが可能です。

具体的に、どのような場合に両方を受け取れるのでしょうか。最も一般的なケースは、「18歳未満の子どもがいる配偶者」が、亡くなった方の遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方の受給要件を満たしている場合です。つまり、亡くなった方が国民年金と厚生年金のどちらにも加入していた、あるいは両方に加入していた期間がある場合に、遺族基礎年金と遺族厚生年金の対象となり得ます。

ただし、両方を受け取る場合でも、一定のルールがあります。例えば、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れる場合、遺族基礎年金の金額は満額支給されます。一方、遺族厚生年金の金額は、本来の金額から、遺族基礎年金に相当する部分が差し引かれることがあります。これは、公的年金制度全体で、二重に保障されないように調整されているためです。

では、遺族基礎年金のみ、あるいは遺族厚生年金のみを受け取るケースとはどう違うのでしょうか。

  • 遺族基礎年金のみ: 亡くなった方が国民年金のみに加入していた、または厚生年金加入期間が極端に短い場合で、かつ遺族基礎年金の受給要件(例: 18歳未満の子がいる配偶者)を満たす場合。
  • 遺族厚生年金のみ: 亡くなった方が厚生年金に加入していたが、遺族基礎年金の受給要件(例: 子がいない、あるいは子が成人している)を満たさない場合。
  • 両方: 亡くなった方が国民年金と厚生年金の両方に加入しており、遺族基礎年金と遺族厚生年金の双方の受給要件を満たす場合。

受給権者の優先順位は?

遺族年金には、「遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い」だけでなく、誰が受け取れるかという「受給権者の優先順位」も存在します。これは、同じ遺族でも、より手厚い保障を受けられる人が優先される、という考え方に基づいています。

まず、遺族基礎年金の場合の優先順位は以下の通りです。

  1. 亡くなった当時、生計を同じくしていた「子がいる配偶者」。
  2. 次に、「子」。
  3. 配偶者も子もいない場合は、遺族基礎年金は支給されません。

ここでいう「子」とは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子、または20歳未満で一定の障がいのある子を指します。

一方、遺族厚生年金の場合の優先順位は、より複雑になります。一般的には、以下の順になります。

  • 妻(ただし、55歳以上で、かつ本来の受給権者である配偶者などがいない場合に、65歳まで受給できるケースなど、詳細な条件があります)。
  • 子、孫(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者、または20歳未満で一定の障がいのある者)。
  • 祖父母(55歳以上であること)。
  • 父母(55歳以上であること)。

この優先順位は、亡くなった方との関係性や、遺族の年齢、扶養状況などによって変動する可能性があります。

受給するためにはどんな条件が必要?

「遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い」に続いて、それぞれを受け取るための具体的な条件を見ていきましょう。これらの条件は、社会保障制度を維持するための重要な要素です。

遺族基礎年金を受け取るためには、主に以下の条件を満たす必要があります。

  • 死亡した方の保険料納付要件: 亡くなった月の前々月までに、国民年金被保険者期間の3分の2以上にあたる期間、保険料が納付または免除されていること。
  • 遺族の要件: 亡くなった当時、その方と生計を同じくしていた「子がいる配偶者」または「子」。

ここでいう「子」の定義は前述の通りです。

一方、遺族厚生年金を受け取るためには、以下の条件が必要です。

  • 死亡した方の保険料納付要件: 亡くなった方が厚生年金保険の被保険者であった期間の3分の2以上で、かつ死亡月前々月までに被保険者期間の3分の2以上、保険料が納付または免除されていること。
  • 遺族の要件: 亡くなった方によって生計を維持されていた「配偶者」「子」「孫」「父母」「祖父母」など。ただし、それぞれの年齢や、扶養されていた期間などの条件があります。

特に、遺族厚生年金は、遺族基礎年金と異なり、亡くなった方の給与や加入期間によって金額が変わるため、条件も細かく設定されています。

年金額はいくらくらいもらえるの?

「遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い」で、金額にも違いがあることをお伝えしましたが、具体的にいくらくらいもらえるのでしょうか。これは、個々の状況によって大きく異なります。

遺族基礎年金の年金額は、原則として定額です。2023年度(令和5年度)の金額は以下のようになっています。

  • 老齢基礎年金受給権者であった方の場合: 79万5000円+子の加算額
  • 老齢基礎年金受給権者でなかった方の場合: 79万5000円+子の加算額

子の加算額は、第1子・第2子は22万4700円、第3子以降は7万4900円(いずれも年額)です。

遺族厚生年金の年金額は、亡くなった方の厚生年金加入期間中の報酬(給与)や加入期間によって計算されます。計算式は複雑ですが、簡単に言うと「亡くなった方の平均標準報酬額×1000分の5.481×厚生年金加入月数」となります。これに、経過的加算額などが加わる場合もあります。

したがって、遺族厚生年金の金額は、亡くなった方の収入や職歴によって大きく変動し、遺族基礎年金よりも高額になるケースが多く見られます。

年金を受け取るにはどうすればいいの?手続きについて

「遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い」や受給条件について理解したところで、最後に、これらの年金を受け取るための手続きについて説明します。手続きは、申請しないと受け取れないため、非常に重要です。

まずは、年金を受け取るためには、「年金請求書(または年金証書)」という書類を、お住まいの市区町村の役所(国民年金関係)や、年金事務所(厚生年金関係)に提出する必要があります。

  • 遺族基礎年金の場合: お住まいの市区町村の国民年金担当窓口に相談し、必要書類(死亡診断書、戸籍謄本、住民票、所得証明書など)を添えて請求します。
  • 遺族厚生年金の場合: お近くの年金事務所に相談し、必要書類(死亡診断書、戸籍謄本、住民票、遺族年金裁定請求書、厚生年金保険被保険者証など)を添えて請求します。

手続きには、亡くなった方の年金手帳や、請求する方の本人確認書類、印鑑なども必要になります。また、保険料の納付状況などを確認するために、数週間から数ヶ月かかる場合もあります。

手続きをスムーズに進めるためには、早めに年金事務所に相談することが大切です。また、複雑なケースや不安な点がある場合は、専門家(社会保険労務士など)に相談することも有効です。

万が一の際に、残されたご家族が安心して生活を送れるよう、これらの公的年金制度を理解し、必要な手続きについて把握しておくことは、将来への備えとして非常に大切です。

大切な方を亡くされた悲しみは計り知れませんが、遺族基礎年金と遺族厚生年金は、残されたご家族の生活を支えるための大切な制度です。それぞれの違いや、受け取れる条件、手続きなどを理解しておくことで、万が一の際に迷わず、適切な支援を受けることができます。ご自身の状況や、将来の万が一に備えて、これらの情報を参考に、早めに準備を進めることをお勧めします。

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